エンジン降しメンテナンス!★NSX★ 兵庫 K・N様 後編!!

前編 からの続きです。

改良型のロストモーションを装着!
ロッカーアームやカムを復元していきます。

洗浄したロッカーアームを組付けます。
小さなOリングとかもありますので、
ちゃんと新品に交換しておきます。

カムを載せてカムホルダーで固定します。
もちろんオイルシールは交換してありますよ。
反対側のラバーシールも交換してます。
ヘッド後方のオイル滲み確認写真に写ってた、黒くて丸いヤツです。
このシールはけっこうオイル滲みの原因になりやすいんです。
そのため交換が必須の部品になりますね。

タイベルリアカバーのパッキンも新品交換。
エンジンの外廻りにあるゴム製のパッキンやシール類は、
全て交換するのがメニューに含まれています。

新品のクランク角センサーに交換して、
タイベルリアカバーを装着します。
この辺りのボルトは外れるとタイベルに噛み込んだりしますので、
トルク管理をしっかりとして締付けます。
ウォーターポンプも新品に交換してありますよ。
装着前にひと手間が必要なんです・・・

ウォーターポンプを固定しているボルトは、
シール剤を塗った特殊ボルトが使われているんです。
そのためボルトを外したネジ穴にはシール剤のカスが残ってます。
これをタップを使って除去しておかないといけないんですよね~。
写真右側の穴の口に赤っぽい物が付着していますよね。
これがシール剤のカスなんです。
穴の口にはヘコんだ段差があって、
そこに付着しているのはタップでは除去できません。
ドリルの刃の先端のテーパー部をカットした自作工具や、
ミニドラを駆使して残ってるカスを除去します。
ボルトの本数が多いので、けっこう手間の掛かる作業なんです。

タイベルを掛けたら 張り調整 をしていきます。
まずはクランクプーリーに工具をセットして回らないように固定します。
続いてフロントバンクのEXカムプーリー(右下)から順番に、
赤矢印 方向の力を掛けてタイベルの緩みをなくします。
最後にリアバンクのEXカムプーリーに力を掛けたままの状態で、
緑矢印部 のテンションプーリーのボルトを緩めます。
プーリーはスプリングの力で矢印方向に引っ張られるので、
最後の緩みがなくなるわけです。
緩みがなくなったらボルトを締付けます。
この時テンションプーリーを指で押したりするのはNGなんです。
あくまでもスプリングの力だけで緩みをなくします。
タイベルは緩すぎても、張りすぎてもダメなんですよね~。

タイベルの張り調整が出来たら、
カムプーリーの合せマークを確認します。
こちらはフロントバンクです。
IN・EXプーリーのマークが正対しているのでOKですね。
コマズレがあるとマークの位置もズレてますので・・・

こちらはリアバンクです。
やはり両プーリーのマークが正対しているのでOKですね。

続いてはタペット調整です。
正式名称はバルブクリアランス調整ですね。(笑
これもけっこう時間が掛かる作業になります。
なんせバルブは24本もありますからね~。
専用工具とシクネスゲージを使って1本1本調整します。
基準値になったらロックナットを規定トルクで締めて再測定。
ロックナットを締める時にズレちゃうことがあるんです。
ズレてしまってたら再度調整のやり直しです。
基準値になったかどうかの判断は、
シクネスゲージを抜き挿しした時の手ごたえのみなんです。
なのでかなり経験が物を言う作業となります。
距離が出たエンジンだとこのクリアランスが広がって、
ガチャガチャといったノイズの原因になるんです。
ところがこの作業もエンジンを降ろさないと出来ないんです。
リアバンクはかなり狭いスペースにあるので、
車上で調整しようにも工具の振り幅がとれないんですよね。
私は1度だけ車上でやったことがありますが、
「もう、2度とやりたくない!」って思いました。
毎回言ってますが、工賃100万円ならやっても良いですけど。(笑

タイベルカバーを装着していきます。
パッキンが新品に交換してありますので、
ハメていくのがけっこうキツイです。
水等が浸入しないように、キツキツになっているんです。
これも車上だとかなり厳しいと思いますよ~。

最近はパッキンにけっこうバリが残ってることが多い。
成型用の型が古くなってるからなのか、
パートのおばちゃんが手を抜いているのかはわかりませんが。(笑
ハメ込む時に支障となる部分は修正しておきます。

ウォポンの排出口部分のパッキンもちゃんとハマってます。

今回もタペットカバーとトップカバーを赤に塗装しました。
オーナーさんのご希望でちょっと暗めの赤にしています。
プロの職人さんに依頼しましたので、キレイに仕上がってますね。
ウチでは結晶塗装(チヂレ塗装)は無理なんで・・・

純正の新品クラッチを装着します。
NSXは純正でツインプレートなんですよね。
そのため少々パワーアップしても、
全然問題ないぐらいの耐久性があるんです。
そのため当店では純正クラッチをオススメしています。
半クラなどの扱いやすさは純正が一番ですので・・・
メタル特有のガツンと繋がるフィーリングを望まれる場合は別ですが。
いつものように特製のSSTを使ってディスクの位置出しです。
ツインプレートは2枚のディスクのスプラインが、
ちゃんと揃っていないとMTをハメる時に苦労するんですよね。
純正のインプットシャフトを加工したSSTですのでバッチリです。

純正クラッチは装着後に イニシャライズ という作業が必要です。
ツインプレートですので、
ディスクの摩耗に合わせてミッドプレートが移動する構造なんです。
フライホイールのウラ側からM5のボルトをネジ込んでリセットします。
これをしないと切れ不良とかの不具合がでちゃうことも・・・

あまり汚れはヒドくありませんでしたが、
クラッチハウジング内部も洗浄してあります。
レリーズフォーク等も新品に交換していますよ。
もちろんオイルシールもね。

MTをエンジンに合体させて、サブフレームに載せます。
塗装したタペットカバーに、
キズや汚れが付かないように養生してあります。

エンジンがサブフレームに載って安定したタイミングで、
新品のクランクプーリーをハメてボルトを締付けます。
かなりの高トルクで締めるので、安定していないと危ないんですよね。
もちろん2人がかりじゃないと締められません。
NSXはクランクプーリーのトラブルも多いんです。
センター部分と外周部分がゴムで溶着されているんですが、
古くなってくると溶着が剥がれて、プーリーがバラけてしまうんです。
まあ、この現象はNSXに限ったことではありませんが・・・
年数の経ったプーリーは危険度が高いですから、
このメニューでは交換必須の部品に含めているんです。

クラッチのスレーブシリンダーも交換します。
油圧系のトラブルもけっこう多いですからね~。
ブーツも新品に交換してあります。
まだ装着してませんが、ホースももちろん交換です。

ドライブシャフトのハーフシャフトも新品です。
上側が付いていたシャフトで、下側が新品になります。
シャフト本体の太さが違うのがわかりますかね?
新車時に装着されたシャフトはMTもATも約30.5φ。
現在の新品のMT用シャフトは約34φになってます。
AT用は今でもそのままの太さらしいですけどね。
都市伝説で「アキュラのシャフトは細い」ってのがありましたが、
国内クーペも初期型は細かったってことなんです。
このシャフトが折れたって話しは聞いたことがないので、
細いままでも問題はないとは思いますが・・・
まあ、太くなるのにこしたことはないので、新品に交換しました。

ドライブシャフトも左右ともに新品にします。
ブーツを新品交換するオーバーホールも出来るのですが、
それだとアウター・インナーのジョイントは古いままになります。
中のグリスは入れ替えますが、ガタが出てたらどうしようもありません。
新品シャフトに交換すると、MT車だとけっこう体感出来るようです。
アクセルの微妙なオン・オフ時に違いがあるそうです。
こちらも部品が出るうちにということで交換を推奨しています。
今後こういった理由での部品交換も増えてくるでしょうね。

ドライブシャフトを装着!

ハブベアリングも新品に交換します。
もちろんハブ本体も新品ですよ!
ハブをベアリングに圧入して・・・

ナックルに装着!
この後ブレーキを復元します。

ウォーターパイプを復元。
ノックセンサーとハーネスは新品交換です。

サーモスタットも交換します。

ドンドンと復元作業を進めていきます。
サーモセンサー等も交換します。

スプールバルブも新品に交換しました。

フロントバンク側はスプールバルブだけでなく、
油圧計センサーや水温センサーも交換します。

インジェクターも新品に交換しました。
現物の洗浄って方法もありますが、
こちらも部品があるうちにってパターンですね。
デリバリーパイプは洗浄してあるのでキレイになってます。

洗浄後に出番待ちをしていたサージタンクを装着して、
インジェクターも装着します。
フューエルホースも新品にしてあります。

細かい水廻りのホース類も新品に交換。

ラジエターホースやヒーターホースも交換です。

イグニッションコイルも新品に交換しました。
これも部品があるうちにって面もあるのですが・・・
古くなったイグニッションコイルは失火をしていなくても、
着火性能が落ちてきているんですよね。
そのため新品に交換するとレスポンスが良くなったりします。
まあ、これはNSXに限ったことではありませんが。
もちろんプラグも新品にしてますよ。

新品パッキンに交換してコイルカバーを装着。
パッキンの装着位置を間違えないようにね。

補機類の復元がほぼ完了しました。
これからサブフレームごとボディーと合体させていきます。

無事にボディーとドッキング完了!
ここからさらに復元作業を進めていきます。

社外のEXマニに交換してあったのですが、
O2センサーの取り廻しがけっこうアバウトだったんですよね。
ヒートチューブで耐熱処理をして取り廻しておきました。

エクスパンションタンクも新品交換です。
古くなってくると本体が黄ばんできて、
中の冷却水の量が確認しづらくなってくるんですよね。
樹脂製ですので割れてしまうこともあったりしますので・・・

コーヨー アルミラジエター!
純正のラジエターはタンク部が樹脂なんです。
古くなったら樹脂が割れたり、接合部から漏れたりします。
アルミラジエターならその心配はありませんね。
それに純正品よりお安かったりしますし。(笑
電動ファンはシュラウドごと移植します。
若干の加工が必要ですけどね。

ボンネット内のヒーターホースも交換してます。
クラッチのマスターシリンダーもね。

腹下に隠れている3本のホースも交換です。
これで水廻りのホースは前から後まで全て交換となりました。
ここのホース交換はけっこう大変なんです。
狭いスペースに隠れてますので、力が入れにくいんですよね~。
しかも新品のホースはキツキツですので、力業でいくしかない!!
3本のホースを交換しただけでヘトヘトになります。(笑

フューエルフィルターも新品交換!
もちろんホースも!!

バキュームユニットのホースも交換。
いつものように知恵の輪と格闘しました。(笑

油脂類を注入したらエンジン始動!
いつもながら緊張する瞬間です。(笑
赤いカバーがカッコイイですね~。

コンプライアンスピボットロアバー!
TypeRにのみ標準装着されている補強バーです。
初期型に装着するとエアコンのパイプと干渉するとのことでしたが、
前回のエアコン修理時に後期のパイプに交換してましたのでセーフ!

アームの付け根は 1G締め をします。
足廻り関連の作業ではお馴染みですね。
最後にアライメント調整をして完了です。
この度はご依頼ありがとうございました。
今回のエントリーで何度も触れましたが、
NSXも部品の供給体制に不安が出始めてきました。
21年の4月に純正部品の大幅な価格改定がありました。
中には倍以上の価格になった部品もあるんです。
ただ値上げをするってことは継続生産の証しと思ったのですが・・・
生産を停止(つまり廃番)した部品も出始めたようです。
メーカーが行っていた「リフレッシュプラン」も、
受付を中止したそうです。
こうなると廃番部品の増加が加速するかもしれません。
今までは「リフレッシュプラン」のために、
部品を作り続けていた可能性も否定できませんからね。
オーナーさんは部品があるうちに手を入れておいたほうが良いかもしれません。
廃番になってからでは、やりたいことも出来なくなりますので。

岡山県倉敷市の「田舎のタイヤ屋さん」です。(笑
軽トラのタイヤ交換1本から、オイル交換・インチアップ・カーナビなどをはじめ
ドレスアップやローダウンもおまかせください。
ハードなチューニングやエンジン・MTなどのオーバーホールもやってます。
車検・一般整備・鈑金修理・中古車販売もお気軽にご相談ください。
当店は進化剤のマイスター店です。
超進化剤NT-1、塗る進化剤ミスリル、冷却系進化剤ZOMAも取扱っています。
http://www.auto-r.com/index.html
# by AutoReference | 2022-06-28 18:04 | NSX | Comments(0)